ごあいさつ

漢字文化への入り口は楽屋裏にあった

「お芝居が終わったら姉妹2人で劇団員さんに花束を渡してもらえませんか」
 高校生の時のことです。家族5人(父、母、私、妹、弟)で京劇を見に行き、休憩時間にたまたま声をかけられました。10代の女の子が京劇を見に来るなんてとても珍しかったからでしょう。楽屋裏に通されて幕が降りるのをスタンバイさせられました。京劇の道具、役者さんたちのキビキビした動き、意味はわからないけれど朗々と歌われる中国のうた。その時のトキメキと感動は今も覚えています。中国語が勉強したいと思った瞬間でした。

 そう、中華世界に魅せられた私がそこにいたのです。この原体験が現在の研究や教育活動につながっています。
 京劇ではなく、漢詩を研究対象としたのはなぜでしょうか。師との出会いなど色々な理由がありますけれど、もともと日本語の詩を含めて詩歌そのものが好きだったということが大きかったかもしれません。なかでも、中国・唐代の詩人李商隠の詩に魅せられ、李商隠の詩で博士論文を書きました。
 ただ、大学時代、平安文学の先生の授業で、作品の享受史や影響研究を面白いと思っていたので、漢詩文の世界で影響研究をしたいと思い、博士論文の完成以後は、唐詩の日本での受容や、日本人が作った漢詩、日本の漢学者の研究などを進めて現在に至っています。

学んで教え、教えて学ぶ

 教える仕事で、最初にまとまったお給料をいただいたのは予備校です。
「他の先生の授業を見て学んでください。今すぐクビにはしませんから」。


 職員さんに脅されるように言われるほど、教えるのが未熟でした。教科の内容を深く学ぶだけでなく、教える技術を学ばなくてはと思いました。現代文の先生、古文の先生など多くの国語科の受験指導をされている先生の授業を拝見し、自分でも工夫を重ねて教える技術を向上させていきました。

 その後、中国語、漢文、日本語表現、比較文学など大学で多種多様な授業を担当させていただき、現在に至っています。「教えることは学ぶこと」と言いますね。受講生のみなさんから多くを学ばせていただき感謝していますが、「学んでください」と言われたことは忘れません。「学んで教え、教えて学ぶ」を大切にしたいと思っています。
 もちろん教壇にたつ時は、楽しくわかりやすく笑顔で(!)を心がけています。

 
 こんな私ですが、皆様ご指導賜りますようお願いいたします。

2015年3月7日

ごあいさつ

「漢字文化の入り口は楽屋裏にあった」

「学んで教え、教えて学ぶ」

お知らせ

2015年3月に刊行した本があります。

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